翡翠の森





・・・



キャシディの忠告どおり、翌日にクルルでは会食の席が設けられた。
当初はどこまで譲り合えるかが焦点であったはずだが、今となっては話題は北のことだ。


「昨日は失礼しました。私が断りなく姿を消したせいで、彼女はいたく心配してしまって。余計な気は揉ませたくないと思ったもので……裏目に出て悪かったね」


拗ねた恋人をなだめるように、ロイの指が頬を撫でる。


(ロイはもうっ……! )


こういう小芝居を、ちょくちょく挟んでくるから困るのだ。
もちろん、事前の打ち合わせなどなく。
ジロッと睨んでも、


『機嫌直してくれないかな。やれやれ』


とでもいうように、困り顔をしてみせるのだった。


「……はあ、それは構わないのですけどもね。それよりもお尋ねしたいことが」


――きた。


「何でしょう? 」


ゴクリと唾を飲むジェイダの隣で、ロイはあどけなく首を傾げている。


「商人達が、国境付近で妙な噂を聞いたと騒いでおりまして」

「妙な噂、とは? 」


情報の出所は大いに疑わしいが、もちろんロイは顔に出さない。