以前ロイが言ったように、お互いが不足しているものを補い合えれば、この困窮した状況は改善できるかもしれない。
だが、その為にはそれぞれの国を行き来できなくては話にならない。
そしてそうなったとしても、顔を合わせる度に怒鳴ったり蔑み合ったりしていては何もできないのだ。
「もちろん、すぐに仲良しにとはいかない。混乱も反対も起きるでしょう。それでも、私たちがやらなくては始まらない」
国の代表者が睨み合っていては、改善は難しい。
皆が心のどこかで、ほんの僅かでも理解していても、口に出せなくなってしまうから。
――こうして、いいんだって。
太ももの上で、ぎゅっと握りこぶしを作っていた手を、ロイが突然捕まえた。
驚いて彼を見ると、そこには先程までの飄々とした面持ちはない。
真剣で、とても焦れている表情に、ジェイダの胸が熱くなる。
(格好いい、な)
指を絡め取られてそんなことを考えるのは、やはり不謹慎だろうか。
この謁見の間が、町娘には不相応だとしても。
目の前にいるのが、一生かかっても目にすることのないはずだった人物だとしても。
ジェイダは、自分の考えを取り消そうとは思わなかった。
「私からもお願いします」
(ロイじゃなかったら、私、行動できなかったよ)



