翡翠の森


「うむ……やはり、どうにも解せないものがある」


気分は良くないが、ジェイダ自身も頷けてしまう。
それに、初めから一目惚れなどではないのだから仕方ない。
まさか、本当に二人の恋愛事情に興味がある訳ではないだろうが、そこからおかしな疑いをかけられたりはしないか。
心配になってロイを見れば、無表情だった彼がにっこりと笑う。


「そうでしょうか。こんなに可愛いのにな。ま、僕には都合がいい。奪われなくてすみますからね」


(……ロイの馬鹿……! )


溜め息の合唱を、気のせいにしてしまえたらいいのに。


「……お前は何故、あの時あの森に? 普段足を踏み入れない場所に、偶然出向くとは。どうにも出来すぎに思うが」


ロイがのらりくらりと返答したからか、それよりも崩しやすいジェイダに矛先が向いた。


「………リスに誘われて歩いたら、あの森に着いていました」


どうしようかと思ったが、正直に話すことにした。
取り繕っても無駄に突かれてしまいそうだし、またその必要もないと判断したが。


《ホントだよ! 信じて! 》


嘘ならもっと、マシなものを吐け。
そう言わんばかりの空気に、少し後悔する。
その更に嘘くさいマロの言い方に、ジェイダはロイのポケットを睨みつけた。


「ふふ。運命だよね」


愛しげに細められた瞳が、もっと頬を熱くする。
けれどもロイは、すぐにその目を向かいに戻した。


「ですから、どうかご決断を。どちらの国も、このままでは衰退するばかりだ。手を取り合うことは、必ず二国にとって吉となります」