「これはアルバート様。ようこそお越し下さった」
扉が開かれると、その人が待ち構えていた。
(この方が……)
キャシディと弟ニールの父。
「この度は、お招きをありがとうございます。兄に代わり参りましたこと、お許し下さい」
――現・クルル王。
「とんでもない。顔をお上げなさい。貴方はまだ、そうすべきではないのだ」
つまり、思惑通りに事が進むと思うな、ということか。
「……」
ロイもそう受け取ったのか、チラリと目を走らせるだけで、顔を上げようとはしなかった。
「まあ、ともかく。まずはお座り下さい」
面倒に思ったのか椅子を勧められ、渋々着席した。
「失礼します」
長丁場になるのか、それとも瞬時に決裂してしまうのか。
ジェイダは固唾を呑んで、見守っていた。
キャシディを初めて見た時にも思ったが、まさか自分が、このような場所に居合わせるとは。
(……何をお考えなのかしら)
「それにしても、まさか貴方が祈り子に想いを寄せようとは……こうして二人を見ても、少々信じがたい」
息子とは違い、その表情も口調も穏やかだ。
これなら話を聞いてくれそうだと、初めのうちは思ったのだが。
「いや、知らされた時には、それもあるかと思ったのです。祈り子は美女が選ばれるものだから。まあ、二人がまるで示し合わせたように、あの場にいたのは謎だが」
本当に不思議で堪らないのだろう。
まじまじと見つめられ、居心地が余計に悪くなる。
(……反論できないのが、悔しいけど)



