翡翠の森


満足そうに笑うところを見ると、やはりそうなのだ。
羞恥と彼の拘束から逃れようと試み、すぐに諦めた。

明日には、とうとうクルルに入る。
ロイの言うように、このひとときが貴重だと思えたのだ。


「本当にあったかいね」


夜だというのに、トスティータの日中よりもずっと暖かい。


(でも、それだけじゃなくて……)


包み込む腕も、何よりもジェイダ自身が熱を発している。
だが、時間が経つにつれ、緊張よりも心地よさが勝ってきた。


「眠い? 」


何故かといえば、多分……彼が口で言う以上には、触れてはこないからだ。

(そんなこと、あるはずないのに。私ったら……)


何かに困惑して、何かを期待していた。

馬鹿みたいだ。

緊張の糸が切れ、一気に眠くなってくる。
もちろん今もドキドキはするけれど、この温かさが眠りへと誘う。


「いいよ、寝てても。しばらくしたら起こしてあげる。……かなり複雑だけどね」


(意識しないはずないよ)


苦笑するロイに、心の中で言い訳する。
好きな人と二人、誰にも咎められずに寄り添っている。それが、とても幸せで。

こうしていれば、大丈夫。
そんな守られている安心感が、瞼を重くするのだ。