翡翠の森


「覚えてる? 僕も男だからね。……女の子が知らない方がいいことだって、あるんだよ」


前にも言われた。
その状況を思い出しかけて、やめる。

知りたいような。
知りたくないような。
チラリと上目で窺ってみたが、ロイはにっこりするだけだ。


《あー、もう! ボクは休みにきたの! 森の静寂を邪魔しないでよ。……ったく、人間ってヤツは……》


頭の中で大声を出され、一瞬だけだがクラクラした。
それが治まった時には、既に子リスの姿はない。


「……人間って奴は、か」

「……」


ポツリと反芻するのが切なくて、ジェイダはもう一度、彼の胸に頬をすり寄せた。


「暗いから、よく分からないな」


トクリ。
また、ロイの心臓が大きく鳴り始める。

自分のものが落ち着いたのか。
それとも、彼が緊張しているのか。
ロイが隠すように、ジェイダの頬を持ち上げた。


「せっかく君といるのに、顔が見えないのもね」


そう言ったかと思うと、ぎゅっと抱きしめてくる。そしてそのまま、パサリと横になってしまった。


「……っ、ロイ……!? 」


側に置かれた灯りが、思ったよりもくっきりと彼を浮かび上がらせる。
となれば、こちらの顔も彼の目にしっかり映っているに違いない。