翡翠の森


ロイの言うように、意識を向ければ向けるほど、彼が男性であることばかり感じ取ってしまうのだ。


『……我慢なさるつもりかしらね? 』


そんな、ジンの一言も。


(ジンめっ……)


耳まで熱くなってきた。
自分の心臓の音が大きすぎて、もう彼の音を聞くことはできない。
それとも、彼は落ち着いてきたのだろうか。
そういえば、随分と涼しい顔をしている。


「ぷっ……何を考えてるの? 」


ゆでだこ状態なのに吹き出すと、顔を覗きこんでくる。
せっかくの暗がりなのに、こうも近くてはすぐにバレてしまうではないか。


「マロみたいに、考えが読めたら面白いのにな」

「……絶対ダメ」

「そんなに言えないことって、何だろうね? 」


拒否されたのが、なぜこうも楽しいのか。
ロイはますます、ジェイダをからかって止めない。


(マロ、ダメだからね! ……って、いないかな? )

《……頼まれても嫌だよ、そんなこと。ボクだって、乙女の妄想を読むほど悪趣味じゃない》


今まで大人しかったので不在かと思いきや、ものすごく不愉快そうにマロが姿を現した。


「あ、いたのね」

《いたよ!! キミらね、ボクがいないかどうか、確かめてから抱き合ってくれない!? ロイは知ってたんだし!! 》

「ごめん。忘れてた」


嘘っぽいロイから、ぴょんとジェイダに飛び移る。


《嘘つけ! そんなんだと、ロイこそ頭の中をジェイダにバラすよ》

「やめろ。ジェイダの為にも」


(それは、どういう……)