翡翠の森


「到着」


そう言うと、馬から降りるのを手伝ってくれた。
そして、着いた先はもちろん――禁断の森。


「夜でも暖かいんだね」


トスティータ用の厚着をしていては、汗ばんでしまうくらい。
彼が上着を脱いだのを見て、少し迷った後ジェイダもそれに倣った。


「おいで」


ロイに促され、そろそろと隣に座る。
それがもどかしかったのか、ぐっと抱き寄せてきた。


「そんなに固まることないだろ」


密着するのは初めてではないが、恥ずかしいものは恥ずかしい。


「だって……本当にいるの? 」


まして、他に人がいるなら尚更だ。


「残念ながらね。でも、気にしなくていいよ。くれぐれも、邪魔はするなって言ってあるから」


(……と、言われても)


人前どころか、その人は常にこちらを見つめているのだ。
彼の関心はロイだけで、ジェイダのことは目に入らないかもしれないけれども。


「ほらほら。僕は一分一秒も惜しんで、君との逢瀬を楽しみたいの。集中してくれないと困る」


集中。

ふと気づけば、頬は彼の胸に接していて。
少し速めの鼓動を聞くのに耐えかねて、顔を上げる。
そうしたら、次に目に映るのはくっきりとした喉仏。


(……無理! というか、集中したらとてもマズイと思う)