(これじゃ、キースさんに嫌味を言われても仕方ないわ)
こんな時に、デート。
それも、来ていく服をとっかえひっかえ。
(本当に、ただの女の子以外の何でもない)
「こんな時だからこそ、よ。ロイ様と貴女。貴女と私みたいに……国は違っても、互いを好きになれたなら。事態はもっと好転する。絶対に」
ジンの話を聞きながら、寝巻きを肩から落とした。適当に聞いているのではない。
(ありがとう、ジン。勇気、出た)
薄明かりの中、ぼんやりと浮かぶ自らの肌を見、大きく頷いた。
(大丈夫。みんな、まだ踏み出す勇気がないだけ)
たった一人でも賛同してくれる人が現れれば、きっともう一人見つかる。
そしてそのまたもう一人を生み出す、きっかけになれば。
「さ、今は堅苦しいことは忘れて、いってらっしゃい。要報告よ」
渋っていたのが嘘のように、ジェイダは外に閉め出された。
バタン。
すぐ後ろでドアが閉まり、思わずビクッと反応する。
「お、おまたせ」
「いや。眠くない? 」
緊張のおかげで、パッチリ目は覚めている。
「ありがとう」
首を振ると、自然に手を取られて歩き出す。
「どこに行くの? 」
宿の外に出ると、大人しく馬が待っていた。
悪いな、というようにロイが撫でれば、彼の手にすり寄ってくる。
大丈夫、とも、仕方ないな、とも言っているみたいに。
「どこだと思う? 」
こんな時間にこっそり抜け出して、彼が行きたがる場所。
それは、もしかして――。
「行くよ」
返事を待たず、ロイが馬を走らせる。
ジェイダも慌てて、彼の腰にしがみついた。



