翡翠の森



(……そろり)


そうっと脱出を試みるが、もちろんそれを見過ごすジンではない。


「夜這いにでも行くつもり? 」

「そ、そうじゃなくて! ……何か、気になって」


どうしてだか、どこかに行かなくてはいけない気がするのだ。


(そういえば、あんなふうに呼ばれるのは初めてだし)


「何もないわよ。こんな夜中に」


本人すらあやふやなのだから、ジンを説得するのは難しい。


「何て言っていいか分からないけど……行かなきゃいけないの。……恐らく」

「何よ、それ。予感? 」


まるで信じていない彼女の目が、暗闇の中疑わしそうにこちらを見ている。


「……………勘」


(う。そんな目で見られても、そうとしか言えない)

「お願い! ちょっとドアの隙間から、覗くだけでいいの」


本当にただの勘だった。
だが、不思議と時間が経つにつれて、焦りを覚える。

早く、早く。
なぜだか分からないけれど、行かなくちゃ。


「ったく、もう。私が開けるから、念の為後ろにいなさい。嫌なら、ベッドに戻って」

「はい! ありがとう、ジン! 」


ブツブツ言いながらも、我儘を聞いてくれる。
彼女に感謝しながら、ジェイダは言いようもなくほっとしていた。