翡翠の森





・・・



『……きて』

「う、ん……? 」

『起きて、ジェイダ』


その夜。
深い眠りに落ちていたのに、誰かが起こそうとしている。


(うーん……眠い……)


声の主には悪いが、睡魔と格闘する気もない。
優しく名前を呼ばれるのさえ、子守唄に等しかった。


『ジェイダ』


(ああ、何か落ち着く。このまま寝させて……)


『ジェイ……』


(……すー……)


『~~っ、ジェイダッ!! 』


「は、ははは、はいっっ!! 」


穏やかな声から一変、怒号が飛んだ気がしてガバッと起き上がった。


「……っ!! 何事!? 」


当然ながらジンも、ただならぬ様子に飛び起きた。瞬時に剣を手繰り寄せ、辺りを窺っている。


「……あれ? 」


誰もいない。
誰かに呼ばれたと思ったが、夢だろうか。


「……ジェイダ」

「……ごめんなさい! 」


睡眠を邪魔されたジンが、噛みつかんばかりに唸る。
目を合わせないよう、そそくさと布団の中に戻り――再び身を起こす。


(夢、よね。でも……)


また、ロイが子供の頃の夢。
ジェイダ本人が半信半疑であるのに、彼は言ったのだ。

『ただの夢だとは思わない』と。