翡翠の森

『いつか、ここだけじゃなくて、お互いが行き来できるようになるかな』


距離的には大したことないのだ。
情勢が落ち着き、もっと理解が深まれば、レジーの家に遊びに行くこともできるのに。


『さーな』


投げやりな言い方だったが、腹は立たない。
ロイだって、尋ねておきながら答えを求めたのではなかった。
逆に自分が問われても、同じ返答になるに違いない。


『おいおい。オジサンが信じていることを、少年が諦めてくれるなよ』


この話になると、ロドニーは熱い。
レジーと顔を見合わせて、同時に肩を竦めた。


『僕らの頑張り次第だ。……きっと、そうなるさ。実際、こうして一緒にいるんだから』


そうは言うが、果たしてそれは叶うのか。
いや、叶える為に自分ができることとは何か。


『ま、いきなりロイが来るのは、難しいかもだけど。今度、他のヤツ連れてきてやるよ』

『え、でも……』


嫌がられはしないだろうか。
かつて、ロドニーから逃げてしまったように、その子も怖がって近寄ってくれないかもしれない。


『だーいじょぶだって! 気に入ると思うぜ』


余程、その子と仲がよくて、信頼しているようだ。
片目を瞑るレジーを見ると、何となくモヤモヤする。


『レジーの友達なら、僕も友達になれるかな。……楽しみにしてる』


そんなことはおくびにも出さず、ロイは言った。


『おお。……だからさ。もし、家に帰ることがあっても、絶対また戻ってこいよ』

『うん』


二人の会話を、ロドニーが一歩離れて聞いていた。


(大丈夫。いつか、きっと叶う。叶えてみせる)


――遅くとも、二人が大人になる頃には。