ピンクとアイボリーを基調とした内装。
天蓋付きのベッドには、ちょこんとテディベアが座っている。


「……えぇと」


お姫様の部屋とは、こんな感じなのだろう。……たぶん。


「あれ、気に入らない? おかしいなー。女の子って、こういうの好きだと思ったのに」


ジェイダが目を泳がせていると、ロイが言った。


「あ、そういう訳じゃ……」

「だから言ったではありませんか。全ての女が、そういうものを好むわけでもないと」


せっかく用意してくれたロイに申し訳なくて、否定しようとしたところ、声とともにドアが開いた。


「ジン」


アルフレッドほどではないが、スラリと伸びた背丈はロイともそう変わらない。
ブロンドを数束赤く染めた髪は、勿体ないくらい大雑把に顎のラインで切られていた。


「ジンは君の世話役兼、護衛だ。こう見えて腕は確かだから、安心して」

「護衛? 」


驚いて目の前の人物を見ると、ふんわりと微笑んでくれた。


「初めまして、ジェイダ様。本日から貴女の護衛に命じられました、ジンと申します」


その優しい表情にほっとしたと同時に、つい、まじまじと相手を見つめた。
その美麗さに、思わず見惚れてしまう。
この国は、美形が多いのだろうか。


「ジェイダ様? 」


それに羨ましすぎる、この豊かな胸も。


「同じ女性の方が、気楽だと思って」


ジンは不思議そうにしていたが、ロイにはジェイダの視線の先が分かったらしい。
クスッと笑うと、そう教えてくれた。


「え、あ、うん。そうだね」


確かに女性同士の方が、気が楽だ。
先程会った人達と違って、彼女は偏見がないようだし。


(……びっくりした。まさか男の人かも、なんて思って)


クルルでは、“ジン”は男性名だ。
トスティータでは違うのかもしれない。


(でも、ロイのことがあるし。事情があるのかな)


「本名はジンジャーなんですけどね。馬鹿な男どもが多いので、そう名乗ってるんですよ」


顔に出ていたのか、ジン自ら疑問を打ち消してくれた。
男性社会で働くのだ。
この美貌が裏目に出ることがあるのだろう。