クルルに帰れる。
(どうして、不安で堪らないの? )
慣れ親しんだ、母国に帰るのだ。
友人も、あの強い日差しだって恋しいのに。
「できる訳ないでしょう、そんなこと」
ジェイダが反応するよりも早く、キースが吐き捨てた。
「陛下をそのような、危険な場所へ……ああ、いえ。ご公務や、お世継ぎ、その他諸々大切な時期です。それをつい先日まで、敵だった国へ送り出すなど」
わざとらしい言い直しは置いておいて、キースの言うことももっともだ。
国の頂点に立つ者に、何かあれば。
もしくは、国王不在時にトスティータに何か起これば。
まして今は、新国王の手腕を値踏みする目も多いだろう。
任せておけないとでも思われて、ゆくゆく内乱が起これば目も当てられない。
だが、元々こちらから申し出た和解案だ。
「キャシディは来てくれたぞ。その後はともかくとしても」
「しかし、今の貴方様とは立場が違う。あんな、ふざけた話し合いと一緒にされても困ります」
せっかくの招待を、『信じられないから、行けません』という訳にもいくまい。
(そうだ。私……)
自分で行けばいいではないか。
いつかは、ロイと離れるのだと思ったばかり。
それが、こんなに突然訪れるとは。
けれど、キースの言うように、アルフレッド直々とはいかないならば。
「わた……」
「僕が行く」
この為に、キースよりも先に聞くべきだと言われたと思ったのに。
ロイが諾を言わせてくれなかった。



