(エミリア様……)
「……わたくしも、ご一緒させて下さい」
怯えているのか、彼女の目は床に落ちていた。
それでも何とかアルフレッドを見上げ、懇願する。
「……分かった」
その視線を真っ直ぐに受け止めると、アルフレッドは先頭に立つ。
何故か、信用しきれていない妻を彼が止めることはなかった。
「エミリア様、大丈夫ですか? 」
そっと腕に触れただけで、ギクリと身を震わせた。
「あ……申し訳ありません、ジェイダ様。大丈夫です」
気丈にそう言ってみせたが、やはり顔色が悪い。
当然だろう。
ジェイダだって、未だにキースの凍てついた目には慣れることができない。
恐ろしくても、側にいたい。
エミリアの気持ちを察して、ジェイダも止めることはしなかった。
「ジェイダ」
二人連れ立って歩いていると、ロイが後ろから声をかけた。
「さ……、エミリア様」
ジンが気を利かせたのか、エミリアに付き添う。それを見送ると、ロイが指を絡めてきた。
(やっぱり、あたたかい。前もこうして、手を繋いでくれた)
冷たい空気と、好奇の目に晒されて。
もう何度、二人手を繋いで歩いただろう。
つい最近のことなのに、何だか思い出話をしている気分になる。
こんな時にも関わらず、照れ臭いのは普段通りで。
なのに今日は、もっと、ずっと切ない。
ロイへの想いが、増したからだろうか。
(それとも……)
嫌な予感が、胸を締め付けているからか。
(アルフレッドへのお祝いなのよ。悪いことのはずない)
そう言い聞かせているのがバレたのか、ロイが繋いだ手を持ち上げ、手のひらに唇を落とす。
「君は一人じゃない。忘れないで」
(……そうね。少なくとも、今は)



