クルルから、新国王に祝辞が届いた。
名目はアルフレッドの即位と結婚を祝うものだが、それだけの為ではない。


「……何て……? 」


――雨が降った。
その、後のことだ。


「それが……」

「しつこいぞ。マクライナー」


ほとんど声になっていないジェイダと、それを落ち着かせようとするロイの声が、荒い声と足音に瞬時に掻き消される。


「アルフレッド様こそ。なぜ、私をそう邪険になさるのです? 仮にも私は、国王様の補佐官を務めているのですが」


キース。
すぐそこにいるのがあの男だと認識すると、ジェイダの心に言い様のない不安が広がる。


「仕えているのが父ならば、他に身を置いた方が得だぞ。……マクライナー」


ドアを隔てた先で、二人の足音がピタリと止まった。


「……私が仕えるのは、この国です」


部屋の中からは、彼らの様子は知れない。
けれど、皆を凍りつかせるには十分だった。


「それを一度、滅ぼしてしまうのか」

「仰る意味が、皆目」


キースの考えを探ろうとして、すぐにやめた。
知りたくもないことだ。


「ったく……それくらいにしなよ」


ロイが苦い表情でドアを開け、すぐに閉めた。
こちらに見せるつもりはないようだ。
きっとそれも、心遣いなのだろう。


「私とて、ご婦人方の前で声を荒げようなどとは思っておりませんよ。ただ、同席させて頂きたく、お願いをしているのです」

「その場にいてどうする。何をどう、誘導する? 」


だが、アルフレッドもキースも、引くつもりはないらしい。
扉の向こう側から、再び争う声が聞こえだした。


「何のことでしょう」

「信用できない人間は、側に置けんぞ」

「アル……! 」


それを止める声もまた、必然的に強くなっていく。