86-84

2点差で勝利、

最後のゴールがなかったら引き分けだった。


ベンチに戻った選手たちは
みんな嬉しそうで、

もちろん 平石はめちゃくちゃ嬉しそう。


「 ますます惚れちゃった? 」

菜桜がニヤニヤしながら聞いてくる。

私は平然を保ちながら
「 全然 」って強がってしまった。


「 素直じゃないねー。菜桜はますます稜矢くんへの愛が止まらないよー。」


…素直だなあ。

羨ましいよ、そんなに気持ちを上手に言えるの。


「 ほらー!会いに行こ? 」

私はボーッと座っていると菜桜に腕を掴まれ、
観客席を後にして会場の玄関に向かう。



玄関付近には試合を終えた平石たちがいて、

……みんな、早い。それに、すごい人。


「 囲まれちゃってるねー。」


平石の周りにはさっきまで応援していた女の子たち。



「 稜矢くんのとこ行っておいでよ 」

「 はる、1人で行ける? 平石のとこ 」


きっと稜矢くんにすぐにでも会いたいだろう菜桜は優しいから、私のことを気にしてくれている。


「 行けるよ! 安心してー!」

って、ガッツポーズを見せたものの
あんな輪に入っていく勇気なんてあるわけない。



私は菜桜が稜矢くんのとこへ行ったことを確認し、

玄関から離れて、会場の外に出た。