思いがけない言葉に
柊も言葉が詰まる。
「10億円が本当に実在していて
私はこれを命懸けで守るなんて…
そんな自信なんてない。
怖すぎる…」
人生でこんな大金を手にするとは
少しも考えた事がなかったカトレアにとって
嘘のような現実を目の当たりにした今、初めて恐怖を感じた。
「お嬢さん…」
それは柊も同じ。
課せられたカトレアの護衛だが
目の前にする”金の山”と”彼女の命”に
自分の仕事の重みを感じている。
同時に思う。
もし仮にどちらか一方を選ばないといけない状況になった時
己はどちらかを選べるのだろうか、と。
天秤に乗せるのは
凄まじいプレッシャーだ。
「…ひとまず、これはもう一度閉める。
この事は何がなんでも
ヤツらに知られちゃダメだ」
柊が重い扉を閉じると
中でガチャン…と今度はロックが掛かる音が響いた。
「上に戻るぞ」
そう言って振り返りカトレアの方を向くのだが…
「柊…さん」
「お嬢さんッ!?」
突然、カトレアはフッと意識を失い膝から崩れていく―――



