「お嬢さんッ!!」

聞こえてきた自分を呼ぶ声に
カトレアは一気に現実に引き戻され
ハッと目を覚ました。

すぐ目の前には
困惑と焦りで不安そうな柊が複雑な表情をしている。

「柊さん…?」

「驚かせんなよ…
 マジで焦ったじゃねーか…」

ホッとしているのか
大きな溜め息を吐きながら気抜けしたように脱力。

カトレアの頭痛はまだ続いているが
どうやら記憶の扉は閉じてしまったらしく
それ以上は思い出せない。

「急にどうしたんだ?
 怯えてたみたいだし
 尋常じゃない震えだったぞ」

彼が見たカトレアは
エレベーターでシオンが見たのと
症状は同じだった。

「少しだけ…記憶が戻ったんです」

「そうなのか!?」

「はい…
 でもそれは私にとってはトラウマみたいで…」

『怖い記憶でしかなかった』と
悲しそうに伝えた。

「内容は聞かねーよ。
 それよりもアンタは寝た方がいい。
 顔が青白い。
 近くに病院あるけど行くか?」

「ううん…平気。
 家に、帰ります」

弱々しく答えるカトレアを心配しつつ
柊は車を走らせたーーー