しばらく車を走らせ監禁された場所から離れると
家に向かう車中
運転する柊が真剣な表情でカトレアに質問する。
「お嬢さん。
あの男からどうやって逃げ出したんだ?」
「それが…私にもよくわからないんですが
どうしてか逃がしてくれたんです…」
正直に答えると
彼は怪訝な表情を浮かべた。
「逃がしてくれたって
まさか拉致したあの男がか!?」
「はい…」
「捕まえた張本人が逃すって
んなバカな話がねーだろ!」
矛盾した話に怒っているのか
カトレアに八つ当たりのように強く言うが
そう言われても仕方のない事。
「理由は私が聞きたいくらいです。
でも彼は…私を殺そうとはしなかった」
「どういう事だ」
「実はーーー」
カトレアは
エレベーター内で起きた出来事を柊に話した。
予期せぬ突然の停止と
シオンが独断でカトレアを連れ出し
仲間から裏切りと見做され“殺せ”と命じられた事を。
そしてその原因となった“記憶”
「私と会ってはいけないと…
思い出すのを恐れているって…」
またズキンと頭が痛む。



