けれど
そんなのお構いない柊。
『今どこにいるんだ!?
ヤツは一緒なのか!?』
「大丈夫。
柊さん…少し落ち着いて…」
受話器から聞こえる彼の大きな声が
痛む頭と路地に響いていく。
聞こえたかどうかは別としても
先程の男達にも見つかってしまいーーー
「こっちにいたぞ!!」
黒のスーツを身に纏った3人組が
一斉にカトレアに向かって走ってきた。
「逃げなきゃッ」
『お嬢さん!?』
柊との通話は切らず受話器を耳に当てたまま
追手から逃げながらも目印になるモノを探して
現在地を探ろうとした。
しかし、逃げ・通話・現在地の
“ながら作業”は集中出来ずに上手くいかない。
「ここがどこなのか全然わかんないッ」
気持ちばかりが逸るカトレアだが
返ってきた柊の声のトーンは落ち着いていて…
『場所は大丈夫だ。
お嬢さんのGPSが見つかったからな。
アンタは余計な事を考えずに走れ。
すぐにそっちに向かうから絶対捕まんなよ』
そう言って電話が切れてしまった。



