SP警護と強気な華【完】


停止する前は20階を上昇していたはずが
表示灯に映し出された数字は1階。

「スマホは返す。
 ヤツらはまだこっちに来ないから
 今のうちに逃げろ」

「え…」

「出口はわかるな?」

「う、うん…でも」

「早く行け」

シオンは奪っていたスマホを返すと
辺りを気にしながらカトレアを逃した。

どうして見逃してくれるのか聞ける雰囲気ではなかったため、素直に応じてエレベーターを出て
真っ直ぐ出口まで走り外へと飛び出す。

離れた距離に見えるのは
シオンの仲間らしき黒ずくめの男が数人。
まだこちらに気がついていないようだが
見つかるのは時間の問題。

(柊さんに連絡しなきゃ!)

建物内の隙間を縫って歩き
声を潜めて電話をした。

『お嬢さんかッ!?』

ワンコールもせず繋がったが
柊の声からは、いつもの冷静さとは程遠い
うわずった声が聞こえてくる。

『大丈夫か!?
 怪我は!?』

顔は見ずにとも
心配と不安な表情が目に浮かぶ。

「平気…
 怪我もしていないです」

建物に隠れ
まわりに聞こえないよう小さく答えた。