「えッ―――」
たったほんの一瞬の光景。
それなのに
どうしてかカトレアは物凄い悪寒がし――
「…ッ」
キーンっと耳鳴りがしたかと思うと
激しい頭痛に襲われてしまい
頭を押さえ、強く目を閉じた。
「ど、どうしたんだ?」
非常灯の点滅から僅かに見えたカトレアの異変に
シオンは何が起きているのかわからず困惑している。
そんな彼の声は届く事もなく
カトレアの脳裏に
断片的な記憶が流れていく――――
そこは真っ暗で狭い場所。
両手・両足を縛られた状態
更にはガムテープで口を塞がれている。
暗闇で何も見えず
目を開けているはずなのに
閉じているんじゃないかと錯覚さえ起こす。
そのせいか研ぎ澄まされた神経。
物音どころか
風の音1つも耳に入ってこない違和感。
そして何より
今いるこの空間に
とてつもない圧迫感を感じる。
逃げる術を失い
得体の知れない恐怖だけが襲い続けた。
「ん゛んッ」
“助けて”と
言葉にならない、くぐもった声だけが漏れる。
カトレアは
少しだけ過去の記憶を思い出した。



