「どういう意味…?
思い出すってまさか
あなたは私の過去を知っているんですか!?」
驚き興奮し
食い気味に前のめりで質問するカトレア。
そんな彼女に
シオンは視線を外して静かに答えた。
「…実際は”最近知った”んだ」
「知っているなら教えてください!
祖父も遺産の事もわからない事が多すぎるのッ」
「それは無理な願いだな。
俺が教える権限はないから」
カトレアの昔の記憶がない事を知っていたシオンだが、迫られても俯いて何も言おうとはしなかった。
「どう…して」
「俺から言える事は
知らない方がいい事もある。ってだけ」
「そんな…」
どういう経緯で誰に聞いて知ったのか
なぜ当人に話せないのか
余計に知りたい疑問が増えていく。
「ではあなたは…
今ここで…私を、殺すんですか?」
カトレアがシオンに
究極な質問を問いた時だ――
唯一点灯していた非常用の蛍光灯が数回点滅。
「非常用も消えるな…」
天井を見上げるシオンも
点滅の灯りに合わせて、暗闇に消える。



