相手が誰なのか
声が聞こえないからわからない。
「違う!俺は裏切ってない。
そういう話じゃないから」
ただ1つわかるのは
余裕のない彼の切羽詰まった声遣いとその表情に
外の相手とモメているという事だけ。
「…わかった」
話がまとまったのか
冷静さを取り戻し通話を切ったシオン。
「運転手がチクったか…」
思い当たる節があったのかボソッと呟くと
ボタンを押すのを諦め
再び壁に背を付けカトレアに目線を送った。
「…何があったんですか?」
恐る恐る質問すると。
「完全にハメられた」
「え…?」
「お前をここに連れてきた事を雑魚にチクられた。
それで逃がさないようにって
俺ごとエレベーターを強制停止させたんだとさ」
「ッ!?」
落ち着いた口調のシオンとは裏腹に
カトレアは驚いて目を見開いている。
ここへの拉致は彼の独断であった事
そして何に対しての”裏切り”なのかと―――
「ここから出るための条件として
選択肢を2つ用意された。
今ここで俺がお前を殺すか
2人で仲良く揃って外の連中に殺されるか」



