電気は非常用が作動し
若干薄暗くなったものの停電は免れた。
が、表示灯のディスプレイは真っ暗。
「なんだよ、こんな時に故障か?」
壁に寄り掛かっていたシオンだが
『タイミング悪すぎ…』と呟きながら扉に近付き
消えた表示灯のモニターを見つつ
各階のボタンを幾つも押し反応するかを試している。
けれど一向に動き出す気配がない。
「あーダメだ。
完全に停まった」
「う…そ…」
シオンの言葉でハッキリと自覚する。
敵である男と
狭い箱の中に閉じ込めらた現実をーーー
(最悪…どうしよ。
こんな人と2人きりなんて…)
カトレアの心配を余所に
慌てる様子もなくスマホでどこかに電話を掛けたシオン。
「エレベーターが停まったんだけど
何があったのさ」
ウンザリしたように問い掛け
その間も緊急ボタンを数回押している。
「は?何それ
どういう意味」
思い掛けない返答が返ってきたのか
急に顔つきが険しくなった。
「…ここに一緒にいる」
カトレアの事を言っているのか
チラッと横目で彼女を見ながら。



