大学で会った
例の謎すぎる男の事だ。
「今日、遺産の事を知ってる人に会いました」
重要案件とは言え
カトレアは慌てる事もなく
さっきの会話の延長…みたいに伝えたのだが。
「はッッ!?
どういう事なんだ!?」
慌てたのは柊の方。
大声を出しながらバンッとテーブルに両手をつき、勢いよく立ち上がったものだから
カトレアはビクッと体を震わせ。
「…痛ッ」
驚いた拍子に
ザクッと人差し指の先を切ってしまう。
「お、おいッ
平気か?」
興奮気味だった柊だが
ポタポタと滴る血液には熱が覚めたようだ。
「大丈夫…です。
ちょっと切っただけなので…」
近くにあったティッシュを数枚取って傷口を押さえてみるが、多少の出血と鈍い痛みが広がる。
「見せてみろ」
「…はい」
言われるまま素直に手を出すと
険しい表情だが優しく掴み
真剣な眼差しで、じっと傷を見つめている。
(こんな近いと、緊張する…)
至近距離になる事なんてなかったから
カトレアは思わず顔が赤くなってしまった。



