その様子を見た男は
『まさか…』と嫌な予感が頭を過った。
「もしかしてお嬢さん…
自分の爺さんから何も聞いていないのか?」
「聞いてるって何をです?
お爺様は亡くなっているんですよ?」
「やっぱ聞いてないか…」
冗談でもなんでもなく
真顔で聞き返すカトレアの表情に
予感が見事に的中したと柊は心底めんどくさそうに頭を抱えたが
当の本人にはそれすら不信。
「絶対怪しいです。
証拠。あなたが警察だっていう証拠を見せてください」
連続した言葉の嵐に
更に嫌気がさす。
「やりづれーな…
警察手帳は持ち歩いてないから身分の証明は無理だ。
そもそもこっちも
護衛対象者がここまで何も知らされていないとは聞いてねーんだよ」
愚痴として思わず出た本音だが
柊は仕方ないかと頭を切り替えて
カトレアに簡潔に説明を始めた。
「爺さんは死ぬ前に
20歳になったアンタに遺産を相続させたんだ」
「遺産…相続?
私が…?」
まるでドラマのような話に
いまいちピンと来ない。



