SP警護と強気な華【完】


壁に寄り掛かり
夕飯の準備を始めるカトレアの後ろ姿を
ポケットに手を入れて見つめ
思った違和感を口にした。

「何、お嬢さん
 怒ってんのか?」

その質問に
一瞬ピクリと反応するが…

「…別に怒っていませんよ」

振り返る事も
食材を切る手も止めずに小さく答えた。

「そうは聞こえねーけど?
 ご機嫌ナナメなんだろ?」

間接的に理由を聞きだそうとしているのか
そんな風に言われれば
手を止めないワケにもいかなくなる。

「…じゃぁ聞きますが」

包丁をまな板に置くと
振り返って柊を見るカトレア。

「どうして教えてくれなかったんですか。
 大学に、それも“講師として”来るなんて…
 誤魔化して言ってくれなかったですよね」

怒っているのは
口調からも表情からもわかる。

「教えるも何も
 特に伝える必要がなかったから言わなかっただけだ。
 どうせ見ればわかる事だしな」

「それはッ
 …そうかもしれないけど…」

言い返したい気持ちはあったが
確かにカトレアが知った所で
何かが変わるワケではない話。