SP警護と強気な華【完】

取り残されたカトレアの思いは複雑だ。

彼が大学に来た本当の理由を
後々身を持って知る事となるが
本人はそこまで深くは考えていなかったし
それより彼女には
調べなきゃいけない事があったーーー

「えっと…」

大学校内にある図書館に訪れ
探していたのは医学専門書。

「あった…」

手に取ったのは
“記憶”についての本。

カトレアはずっと
自分に過去の記憶がない事が気になっていて
同時に疑問にも思っていた。

“単純に忘れている”
だけじゃないんだという事を。

「解離性健忘…」

読んだ資料に書いてある言葉に衝撃を覚えた。

“トラウマなどによって引き起こされた記憶喪失”

それが自分に当てはまっているのか
確かめる術はないのだが
なんとなくそんな気がして仕方ない。

「なぁ、冬月カトレアさん」

「え?」

手元の資料を読むのに集中していたからか
人が近付いていた事に気が付かず
声を掛けられて初めて顔を上げた。

「反応したって事は
 やっぱりキミが冬月さんか」

腕組みをし本棚に(もた)れ掛かりながら
不敵な笑みを浮かべる男。