彼は1人用のソファを
ベッドに座るカトレアに向けるように動かすと
少し距離を空けて腰掛けた。
「それで?
何が引っ掛かっているんだ?」
そう言って
彼女が持つ写真に目線を移す。
「どう言ったらいいのか上手く言えないけど
この時の事を覚えていないというより
ポッカリと穴が開いてる感じで…
変な話、自分が何者なのか。とか
この時の感情や思い出が
靄に掛かっているんです」
カトレアは記憶を思い出すように
手探りで言葉を紡いでいる。
「大人になると子供の頃の記憶って曖昧になるものだし、そんなに気にする必要はないのは、よくわかっているけど…
ずっと引っ掛かていた事なので…」
「覚えていない過去の記憶ねぇ…。
もし仮にそれが遺産の手掛かりだったとしたら、確かに思い出さないといけねーか…」
「ですよねぇ…」
(って、俺が追い込ませてどうすんだよ)
苦笑いを浮かべながら更に深刻に考え込んでしまったカトレアを見て
柊は天を仰いで自分の発言に嘆息した。