その日は昼近くまで
片付けと遺産の手掛かりを探し続けたが
結局、それらしき物は何1つ見つからない。
「やっぱりそう簡単には見つからねーか。
そっちは何か手掛かりあったか?」
柊はデスクの引き出しを開けながら
カトレアに話し掛けるが
当の本人は写真を見つめたままで
彼の声が耳に入っていない。
「おーい、お嬢さん」
「あ、はい?」
ようやく反応したカトレアに
柊は『やれやれ…』と困った表情を向け。
「大丈夫か?お嬢さん。
今日はここまでで終わりにするか?」
「え?私なら大丈夫ですよ?
まだ全然なにも見つかってないし…」
なぜそんな事を言うのかカトレアは首を傾げて
不思議そうに柊と目を合わせるが
その表情からは無理をしているのがわかる。
「今はもうやめておけ。
じゃなきゃ後で急激に来るぞ」
これだけ促されてしまえば
頷くしかなくなる。
「…はい。
でも、これだけは気になって…」
1度写真に目線を移し
そしてまた柊を見て言う。
「私の記憶がないのが…
ちょうどこの写真以前なんです」



