そんな事をすれば
金の在り処だって白状するのは無理な話。
だが今の黒谷にはそこまでの頭はない。
「さぁ早く答えて」
なんとも無茶苦茶だ。
「わ…たしが、死ん…だら
手に、はい…らないよ」
締められて苦しい中
息も絶え絶えになんとか言葉を発するが
彼には逆効果だった。
「確かにね…
だけどどうせ最終的には君は必要なくなるんだし
殺して奪うのもアリかもしれない」
「そ、んな…ッ」
我を忘れたかのように豹変する黒谷は
拘束していた手を離し
今度は両手でカトレアの首を締めた。
「ん゛ぐッッ」
片手でも苦しいのに
両手となると力の入り具合も大きく変わる。
(力が…入らない)
拘束が解かれて自由になったが
突き飛ばす力は奪われていて抵抗も出来ず
頭に血液が届いていないからなのか
それとも窒息寸前のためか
気が遠くなっていくーー
"死ぬかもしれない"
薄れていく意識の中で
死の恐怖だけが襲いかかる。
もうダメかと諦めかけた時だ。
ーーバンっ
勢いよく扉は蹴破られ
開け放たれた先に現れたのは、柊ーー



