そう簡単に素直に引き下がる相手ではなかった。
「君の方こそ
嘘をついても無駄だよ。
遺産相続の内容が”20歳の誕生日に10憶を渡す”事だって
こっちは知っているんだから」
黒谷の言葉にカトレアは更に驚いた。
柊以外にもそこまで知っている人物がいた事に。
そして同時に新たな疑問が浮かぶ。
他に誰がどこまで知っていて
誰からその情報を聞いたのかと――
「もう少しで10憶が手に入る…
そう考えたら興奮するよ、カトレア。
さぁ、いいかげん早く教えて。
これ以上、時間を取らせないで」
ニコやかな笑顔はなく
眼は完全に”金の亡者と化”している黒谷。
(このままじゃマズいッ)
助けを呼ぼうにも
ソファの下に置いてしまった鞄の中に携帯電話が入っているため電話は不可能。
身動きが取れない状態だから
唯一出来るとしたら”大声”くらいなのだが…
「そうはさせないよ」
「ん゛ッ」
思惑に勘付いた黒谷。
叫ばれないようにと
片手でカトレアの首を絞めた。



