「嫌ッ
お願いだからこんな事やめてッ」
いくら足掻いてもホールドされた体は身動きが出来ず護身術も使えない。
けれど嫌がるカトレアなど気にする様子はなく
拘束している手とは逆の、空いている方の手で
彼女の唇を指でなぞりながら彼は言う。
「お金の在り処を教えてくれたら
やめてあげるよ」
「えッ―――」
思い掛けない言葉に
カトレアは驚いてしまい
目を見開き体は一瞬にして硬直。
(お金って…まさか…)
脳裏に浮かんだのは
昨晩、初めて出会った柊という男の言葉。
『大金目当てに命を狙われる』
(あの人が言ってた事が本当だったなんて…)
まさかこの状況で柊の言葉を信じるとは思いもしなかったが
今はそんな場合ではなかった。
「お金は、どこ?
早く教えて?」
すぐにでも聞き出そうと
両手首を掴む手に力を入れて急かしてくる。
「お金の在り処なんて
何の事なのか誰と勘違いしているのか知らないけれど
こんな事しても無駄」
隠している事が悟られないよう
あくまで”自分ではない”と主張したのだが。



