SP警護と強気な華【完】


窓も通気口もない地下は空気が薄くなり始め
必死に金を取り出す父親の息が上がっていくが
本人は気にする様子もなく夢中でかき集めている。

そんな父親の後ろ姿をカトレアは
分厚い壁に寄り掛かってただ黙って見ているしかなくて、痛み以上に悔しさで涙が零れる。

(柊さん…)

こんな時なのに
いや、こんな時だからか
目を閉じて頭に浮かぶのは柊の存在。

護衛が任務の彼に
ワガママを言って強引に決めてしまった今回の作戦。

きっと今も怒っているんだろうなと考えてしまう。

そして後悔ばかりが先立つ。

(最期かもしれないのに
 もう会えないかもしれないのに
 まだちゃんと彼に返事をしてない…)

好きだと言ってくれた柊に
何もまだ伝えていない。

それだけが唯一の心残りだった。


地下から外部の音は遮断されてしまっている為
柊とシオンの戦闘は聞こえてこない。

無音の中
流血を伴いながら酸素の少ない空間は
体力を奪われていく。

金を集める父親もまた
先程より苦しそうな表情を浮かべている。