怒りが頂点に立ち
まるで性格が変わったかのように我を失っていた。

「そこを退け」

数人の敵を蹴散らして玄関まで辿りついたが
目の前に立ちはだかるシオンに睨みつける眼は
完全に瞳孔が開いていた。

「少し落ち着きなよ、護衛さん。
 まだこれだけの人数がいるのに
 1人で抵抗して暴れても勝ち目はないよ」

シオンは説得にも似た言葉を掛けてみるが
今の柊は獲物を狩るような目つきが穏やかになる事はなく、より一層、人を殺しかねない表情に変わっている。

そんな彼を
シオンは見ていられなかった。

「俺の負けだからアンタとは戦わないよ。
 勝てる自信もないし」

敗北宣言をしてみるも
そんなので変わるはずもなく。

「うるせぇな、黙ってそこを退け」

聞く耳なんて持っちゃいない。

「はぁー…。護衛さん
 アンタが助けたいのはカトレアだろ。
 今のアンタのその眼
 アイツに見せられんの?」

「…なんだと?」

「助けたいんだろ。
 だったら今は俺と休戦しろ」

「は?」

「俺も
 ”想い”はアンタと一緒だから」