「きっと遅い時間に出掛けたから怖い目に遭って
誰かに助けて貰ったから無事に帰れたんだってね。
何かおかしかったかな?」
聞けば確かに『それもそうか』と納得出来るし
辻褄も合う。
一般的に考えれば普通の事なのかもしれない。
それでもカトレアの中では何かが引っ掛かっていて
素直に受け止める事が出来ず
複雑な表情で彼を見つめてしまう。
疑われている事を感じ取った黒谷は
ニコニコしていた笑顔が一瞬、真顔へと変わり
カトレアはそんな彼の顔色を見逃す事がなかった。
(な…に?今の…)
”まるで本当の顔”
そんな風にも感じる――
しかしすぐに彼はまた笑顔に戻り…
「それよりもカトレア。
今日はクリスマスなんだから
特別な日にしよう」
何事もなかったように
さらっと話題を変えてきた。
…いや、はぐらかされたという方が正しい。
「カトレア…」
つい今まで普通に話していた黒谷だったが
体を密着させるように近寄り
急に甘い雰囲気を醸し出しながら優しく名前を呼び、耳元で愛を囁く。
「君が欲しい――」



