鍵であるネックレスを握りしめ
目を閉じ『ふぅー…』と息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

(この遺産を渡したら…私はもう用済み。
 きっとここで殺される)

血の繋がっている父親から殺される覚悟
死の覚悟なんて到底無理な話。
それでも自分で決めた事だから
最期まで役目を全うするつもりのカトレアは
意を決して鍵を差し込んだ。

柊と開けた時と同様
金庫内のロックが外れる音がし
1人で重たい扉を動かした。

すると少しずつ見えてきた札束。

目に眩んだ父親は
金を見るなり更に興奮が増し…

「あとは僕が開ける!
 どけ!」

「きゃっ」

カトレアを突き飛ばし
自ら扉に手を掛け開けていく。


”金で人が変わる”
自分の父親が金の亡者へと変貌する有様を目の当たりにし、カトレア心が締め付けられ涙が込み上げてくる。

初めて痛感されたのだ。
『これ以上はもう何を言っても無駄なんだ』と。

覚えている頃の面影は微塵もない。

(私が全部終わりにする)

カトレアはそう決意し
父親が床に置いた拳銃を手にした―――