例え実の娘に拳銃を向ける悪人だとしても
カトレアにとっては、たった1人の肉親だから。

「もう辞めてよ…お父様。
 こんなの、悲しすぎる」

父親の心に訴え掛けようと試みるが…

「うるさい。
 早く地下(した)に案内しなさい」

聞く耳は一切持ってはくれず
それどころか引き金に指を掛ける力が加わっている。

これが脅しじゃない事がわかった。

「…わかりました」

仕方なくカトレアは拳銃を向けられたまま
共に地下へと下りていった―――


「す、凄い…
 これほどの規模だったとは…」

金庫を目にした父親は
想像以上の大きさに気を取られ
カトレアから銃口を外してしまう。

「ふぅ…」

彼女もまた
恐怖のプレッシャーから解放された気がし
今のうちに地上に戻ろうと静かに後ずさりを始めた。

だが。

「行かせないよ」

彼女の行動はバレていたようで
振り返ってすぐにまた拳銃を向けられてしまった。

「開けるには暗証番号と鍵
 指紋も必要みたいだからね。
 ほら、早く開けなさい」

拳銃で指図され
カトレアは言われるまま金庫の前に立った。