それを聞いた柊は
『やっぱりそうか』と頭を抱え
1番驚いたのは何も知らなかったシオン。

「あの人に渡すって
 なんで急にそんな話になったんだよ」

少し怒っているようにも見える表情で
まるで彼女の意見を“反対”しているとも取れた。

「以前あなたが私に言ったように
 あのお金を持っている限り
 ずっと命を狙われる事になる。
 もうそんなの、嫌なの…」

辛そうに精一杯の気持ちで伝えるカトレアの言葉に、柊はもちろんシオンの表情も暗くなる。

「そんな事しても何も変わらないと思う」

「そうだとしても
 私は決めたから…」

揺るがない気持ちに
シオンの心が揺れる。

「渡すって言ってもどうするのさ。
 罠だって警戒されて終わりだよ」

シオンの言う通りだった。

遺産の隠し場所を伝えているとは言え
屋敷中は警官が護っていてネズミ一匹逃さないだろう。

だがカトレアは確信していた。

「お父様は
 どんな手を使っても保管場所を知りたがってた。
 隠し場所は伝えてあるんだから
 何がなんでもココに来る」