SP警護と強気な華【完】


カトレアは柊の目を見ながら
コクン、と1度頷いて口を開いた。

「私はこれからも普通の生活をしていく。
 だからお爺様には申し訳ないけど
 お父様(あの人)に遺産の全てを渡す」

その目に迷いはなく
揺らがない信念のように感じる。

「本当にそれでいいのかよ…
 爺さんも母親もアンタのために残したモンだろ。
 そんな簡単に手放すのか?」

「簡単じゃないッ!」

思わずカトレアは柊に強く言い返してしまったが
その目はとても悲しそうだ。

「何が正解かなんて
 正直私にはわからない。
 ただ、あのお金がある以上
 誰も幸せにはならない気がする。
 あんなお父様を見るのも…もう嫌」

「…そっか。
 余計な事を言って、悪かった」

彼女の本音を聞いた柊の思いは
少し複雑なものだった。

自分が逆の立場であっても
残されたものを守り続けるべきか手放して楽になるのか
選ぶのは難しいと感じたからだ。

「それに…
 あのお金さえ渡してしまえば
 柊さんにももう迷惑を掛けなくて済みます。
 私を護る必要もなくなる」

「何言ってんだよ」

柊はカトレアの言葉に胸騒ぎを覚え。