けれどこれは
『父親が虚偽の発言をしているのかもしれない』
『自分を拉致監禁した父親を信じられる要素がない』とカトレアは鵜呑みにせず
柊と目を合わせ、彼に問い掛けた。
「嘘、ですよね?」
…と。
しかし、彼からの反応は想像と違っていた。
何か伝えようとしているが
言うに言えないのか
カトレアから目を逸らしてしまったのだ。
「嘘…」
(柊さんがどうして…)
カトレアは酷くショックを受けた。
婚約者がいた事も
過去にあった出来事も話してくれなかった柊に対しても。
そしてそれと同時に
柊の事を何も知らない自分に悔しさが大きくなる。
「今も護衛しているカトレアに
自分の過去を話せるはずがないよね。
でも警察官を辞めずに続けているって事は
それほどたいした事じゃなかったって意味なのかな?」
「…ッ」
明かに挑発しているのはわかるのに
柊は何も言い返さず
ギッと強く歯を食いしばり拳に力を入れるだけだ。
「柊さん どうして…ッ
お父様もなぜこんな事をッ」
カトレアは涙が溢れた。



