お互いジッと目を逸らさず
相手の次の行動を探りあっているため
隙を狙って玄関から中へ入るのは至難の業。
(どうしよう。
たぶん私が動くよりも先に
この人が走ってくる方が早い)
一瞬でも目を背ければ
父親にすぐに捕まる。
それほど緊迫した状況に陥っていた。
けれど、その空気を打破したのは――
「お嬢さんッ!!」
柊だった。
用事を済ませ車で戻ってきた彼は
見覚えのある黒い車がカトレアの屋敷近くに停まっているのを見つけ、慌てて走ってきたのだ。
「柊さんッ」
彼の姿を見たカトレアは
根拠なんてないが
”もう大丈夫”だと少しホッとしていた。
もう独りじゃない、と。
しかし解決したワケではない。
「…マジ?」
門扉の前で柊は立ち止まってしまった。
黒服の男が2人で行く手を塞いできたのだ。
人数は前回よりも少ないが
先日ボコボコにしたヤツらと違って
今回はガタイの良い連中にグレードアップしている。
「図体がデカくても
1人じゃ俺を倒せねーのか?」
だが、柊は挑発。



