「え?」
まだよくわかっていないカトレアに
彼は冷たく言い放つ。
「まぁ、そうなっても仕方ないか。
当時カトレアは幼かったんだ。
ちゃんと恐怖として刻まれるくらいトラウマにさせたのは、殺そうとした僕なんだからね」
「な…に言って…」
幻聴かと思う恐ろしい言葉1つ1つに
絶望を感じ血の気が引いていく。
(この人が私を閉じ込めた?)
そう思った瞬間
頭の中に流れ込んできたのは
思い出し掛けていた、あの時の記憶の欠片。
そのピースが組み立てられていく―――
『金の為なら娘の命も惜しくない』
知らない男達に押さえつけられ
両手・足首を縛られた幼いカトレアを見下ろし
感情のない言葉を吐き捨てたのは
紛れもなく、カトレアの父親。
その決定的な瞬間の記憶が
蘇ったのだ。
(そうだ…全部、思い出した。
この人だったんだ)
「お金はどこ?
場所はもう、わかっているんだよね?」
記憶を思い出したとは言え
すでに父親は門扉を開け
ジリジリと追い詰めるように近づいてくるから
逃げ場がない。



