驚いたのは、もちろん父親。
まさか娘に拒絶されるとは思ってもみなかったから。
しかし驚いたのは彼だけではない。
(私は、なんて事をッ)
カトレアは口を押さえて
自分の言動に焦った。
意図した発言ワケではなかった。
本来なら拒絶など、あるはずがない。
それなのに…
(わかんないッ
わかんないけど
この人とは関わりたくないッ!)
本能的にというべきか
覚えていないはずの相手なのに
この男から“妙な恐怖”を感じていた。
「どうした?カトレア。
お父さんが怖いか?」
先程までと違い
目の奥どころか表情からも完全に笑顔が消えている父親に、ぞくりと身の毛がよだつ。
ガタガタと震える体。
カトレアは、この感覚を覚えていた。
それは恐ろしいものを目の当たりにし
逃げられない恐怖に怯えた記憶。
その時と同じだった。
「あなたが私を…」
“殺そうとした真犯人“…ーーーーーー
その言葉で父親も
娘が言わんとする言葉を理解した。
「記憶はなくても
感覚で覚えているんだね。嬉しいよ」
それが父親の本性。



