「あなたはいったい、誰?
私との関係は、何?」
躊躇いもなしに聞くカトレアに
男は冷静に、いや冷酷な笑みを浮かべて答えた。
「覚えていないなんて残念だよ。
父親の顔を―――」
「え…」
(お父様… ?)
カトレアは自分の耳を疑った。
6歳の時に両親が離婚し14年が経つが
父親とは1度も会った事がなく
過去の記憶を失ってから顔も忘れてしまっていた。
それだけにカトレアにとっては
“感動の再会”というより“衝撃の出会い”の方が
率直な気持ちだ。
「会いたかったよ、カトレア」
ニコリとまた笑顔を見せる父親だが
その目の奥は笑ってない。
「どうして急に…」
今ままで会いになど来なかったのに
なぜ今更、それも金が見つかった《《このタイミングで》》で訪ねて来たのだろうかと不信感が募る。
「ずっと会いに来ようと思っていたんだけど
こちらにも事情があって遅くなってしまった。
20歳、おめでとうカトレア。」
そう言いながら門扉に手を掛け
開けて入ってこようとされ…
「こ、来ないでッ!」
思わず後退りしてしまった。



