気のせいなのか
それとも悪戯なのかと首を傾げながら玄関の鍵を開け、外に一歩、足を踏み出すと――
「やぁ、カトレア」
門扉越しに立っていたのは
眼鏡を掛け黒い短髪に顎髭の40代くらいの男性。
「久しぶりだね。
大きくなって見違えたよ」
ニコリと笑顔を見せながら挨拶されたが
カトレアはピンとこない。
それどころか見覚えがなかった。
(私を知ってる…人?)
思わず不思議そうに首を傾げたからか
それは相手にも伝わっていた。
「覚えてない感じかな?」
「すみません、ちょっとわからなくて…
失礼ですがどちら様でしょうか…?」
自分の名を知っているくらいだから
何かしら関わりがある人物だと思うが
よくわからず申し訳ない気持ちで返事をした。
しかし
相手から返ってきた言葉で
すぐに意味を理解する事に…
「じゃぁまだ僕の事は思い出してないんだね」
「ッ!?」
言葉が出ないどころか
声にもならないほどの驚きだった。
(私の過去を知っているッ)
ゴクリと生唾を呑み込み
意を決して問い掛けた。



