16歳になった娘に
鍵となるネックレスを託し母親が他界。
20歳の誕生日の前に
祖父は大金を残して亡くなっている。
記憶を繋いで考えてみると
祖父と母親はカトレアに
”自分達の命の対価”として遺産を相続させていた。
本人も知り得ない真実だ―――
「何も知らなかったお嬢さん、たった独りに
アンタの家族は
なんつー”重い荷”を負わせたんだ。
これじゃただの押し付けだろ」
黙って聞いていた柊だったが
『あまりに身勝手な理由だ』と
どうしても許せず、唇を強く噛みしめた。
「何か理由があったんだと思います。
そこまでは思い出せないけど…
きっと何か…」
横になったまま目を閉じ
思い出そうとするカトレアの顔色は
熱のせいか更に悪化しているようにも見える。
「お嬢さん、もういいやめておけ。
記憶を思い出しまくってキャパオーバーなんだよ。
このままじゃ熱なんて下がんねーぞ」
そう言って
額に乗せていたタオルを退かし
もう一度氷水で濡らして冷やすと
彼女の額に再び乗せた。



