狭い箱型になっている庫内で
点滅する電気が誘発する原因になったのだ。
「記憶を失ったのがその時なんだと思います。
地下の部屋の事も
両親や祖父、自分自身すら曖昧で
『私は誰なんだろう』って不思議な感覚のまま
年月が過ぎ大人になりました」
そしてカトレアが話した
もう1つの記憶―――
「このネックレスが鍵だっていうのは
ここに戻ってきて眠った時に思い出したんです」
手に持っていたそれを
柊に見せるように差し出すと
彼もそっと手を出し受け取った。
「このネックレスは
ずっとあったものなのか?」
「実は…
母の形見なんです」
「母親の…?」
「はい。
私が16歳の時に病気で…
亡くなる前に私にくれたんですが
妙な事を言っていたので…」
「妙な事…?」
あまり喜ばしい内容じゃない事は
俯き加減に暗い影を落とすカトレアを見て察する。
「”貴方の人生にとって
幸福で価値あるものになる事を願っている”と。
当時はよくわからなかったけど
今思えば、鍵の意味なんだろうなって」



